これは、小児がんにかかった子供とその家族をサポートする財団法人「がんの子供を守る会」会長の言葉だ。
ちょっと狐につままれたような気分でこの言葉を聞いたのだけれど、そこから先のお話を伺って、「あ、そういうこともあるんだ」という、「闘い」の内容に正直なところ、驚いた。
子どものがんは、白血病が多いそうだが、それ以外にもいろいろな種類のがんがあり、たいていの場合、大人に比べてその進行が早いという特徴があるそうだ。
しかし、近年は、有効な治療薬の出現、医療技術の進歩のおかげで、治癒率はずいぶん上がっている。
ただ、病気が治った後に彼らを待ち受けている"もまた、手ごわいものであるようだ。
たとえば、
○闘病によって、学校を休んだことで勉強が遅れてしまい、進級や進学に支障を来たすこと。
この件は、まぁ想像はできた。
しかし、
○治療にともなって、放射線を大量に浴びざるを得なかったり、化学療法の薬品の後遺症が残ることも、少なからずある。
○がんを患ったことを進学や就職に際して、履歴書などに、そのことを記載するかどうか。
○結婚するにあたって、がんを患っていたことを相手とそのご家族に受け入れてもらえるか。
といったことになると、会長さんのお話を伺ってはじめて「あ、そうか」気付かされた。おそらく一般の人にはなかなか、そこまで思い至ることは難しいのではないだろうか。
実際、子供の頃にがんを患っていたことが理由で、本人同士は意志を固めていても、ご家族の反対に遭って結婚できないというケースもあるそうだ。
完治したとされ、治療を受けることは終わったとしても、子供のがんを患った人たちは、その後もまだまだ"がん"と闘っていかなければならない、という現実は、もっと広く知ってもらいたいと、会長さんのお話を伺っていて感じた。
「がんの子供を守る会」の公式サイトの「小児がん経験者の自立支援」というページを見ていくと、
○長期の入院や療養生活の結果、普通の子供たちと同じような生活が送れないことがある
○慢性的な頭痛や倦怠感、体力の減退といった障がいが、認定されていない
といった問題点をサポートするための事業が、行われていることがわかる。
さらに「きょうだいの支援」というページもあり、病気に罹った子供だけでなく、その子の兄弟にもまた、サポートが必要だということにも気付かされた。
患者家族への経済的な支援はもちろんだけれど、医療の進歩のための助成、治癒した後のサポート、そして残念ながら亡くなってしまった子供のご家族への支援、課題はたくさんあるのだなぁ、ということを知った。
これは、9月28日に、紀尾井ホールでKame Pro Clubと三響會倶楽部共催の「伝統芸能の今」という公演での、「がんの子供を守る会」会長さんのご挨拶の中で触れられたことである。
「伝統芸能の今」というのは、市川亀治郎さんと三響會(能楽囃子方の亀井広忠さん、歌舞伎囃子方の田中傳左衛門さん・傳次郎さんのご兄弟が主宰する会)が、一緒に演奏や舞踊を行う公演。
今回、チケット代の一部(千円)をゴールドリボン基金に寄付すると、案内されていた。
演奏と演奏の間に、トークのコーナーがあり、そこでメンバーによる芸談などの話の後、ゴールドリボン基金についての説明と、会長さんのご挨拶があった。
亀治郎さんと三響會のみなさんは、今後も年に一度はこうした活動を行っていきたい、と話された。
何か、社会に貢献することができる活動をしたい。そのためには、自分たちは芸をみなさんに見て聞いていただくことしかできないので、こういう会を開くことにした。これをきっかけに、みなさんにも、「がんの子供を守る会」の活動に興味を持ってもらいたい、といったことを亀治郎さんとこの会の?企画部長の傳次郎さんが話していた。
チケット代からの寄付とは別に、当日、ロビーでも募金活動が行われていて、開演前は亀治郎さんと田中兄弟が、終演後は広忠さんが募金を呼びかけていたので、終演後に些少ながら、寄付をさせていただいた。