2階の歌舞伎本コーナーで、新刊を発見!
『拝啓「平成中村座」様』(世界文化社)
明緒さん(串田和美さんの奥様らしい)の写真と、平成中村座の主立ったメンバーの、平成中村座に宛てた手紙、勘太郎くん・七之助くんと串田さんとの鼎談で構成されている。
平成中村座は、何度か見に行っていて(最初の数回は、見る事ができなかったのが、今となってはとても残念)、大好きだ。
雨が降れば屋根を雨粒が叩く音が、花屋敷からはお客の歓声が、救急車やパトカーが通ればサイレンの音が、といった案配で、決して劇場としてはいい環境ではない。
でも、芝居小屋としては、その混沌としたところが楽しい。
去年の公演は、桜席で「忠臣蔵」と「法界坊」を見る機会を得た。
開幕前、幕が引かれた後、舞台でどんなことが起こっているのかを、見て、肌で感じる事ができて、とても楽しかった。
大道具さんが道具を出したり引っ込めたりする様子。
幕が開くのを待つ役者さんたち。
「忠臣蔵」の大序で、下手の幕溜で、「置鼓」という小鼓の手を、幕が開くのと息を合わせて打つ傳左衛門さん。
道具の陰で合引を抱えて控えている黒子さん。
すぐそこに仁左衛門さんの大星が! 勘太郎くんの勘平が! 勘三郎さんの判官が!と、興奮したよなぁ…。
「法界坊」では、わたしのまん前の席に、出を待つ勘三郎さんが突然現れて、周りのお客に「暑くないですか?」とか「見にくくないですか?」などと話しかけてくれた。
したたる汗を見かねて、お扇子で勘三郎さんをあおいであげたり(団扇じゃないと効果はあまりなかったけどw)。
平成中村座は、ほんとに小さな小屋で、役者さん・地方さん・裏方さん・表方さんが一体になった熱が、直接客席に伝わってくる。そして彼らが、わたしたち客をもてなすばかりでなく、一緒に楽しんでいるのが感じられる。
ここでは、芝居の最中でも、お弁当やおやつを食べたり、お酒やお茶を飲んだりしながら見てください。
芝居って、もともとはそうやって見るものだったんだから、と勘三郎さんは言う。
結局いつも、見ながらお弁当を食べる間もなく、芝居に引き込まれてしまうのだけれど、江戸時代の人たちは、きっとこんな感じで芝居を見て、楽しんでいたんだろうな、と思えるのが、平成中村座という芝居小屋だ。
この『拝啓「平成中村座」様』で、勘三郎さんをはじめとした役者さん、串田さんが書いた手紙を読みながら、明緒さんの写真を見ながら、今までに見た舞台のあれやこれやが、頭の中で走馬灯のように甦ってきた。
そして、舞台の感動までもが、そのまま思い出された。
たぶん、来年の秋あたりにまた、平成中村座に再会できるはず。
今度はどんな芝居を見せてくれるのだろう?あの小屋で。
それまで、時々、この本を取り出して、思い出すことにしよう。
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